Netflixオリジナルのアニメ作品『ラブ、デス&ロボット』シーズン1の1話目にあたる
- ソニーの切り札
という短編作品の解説を以下、まとめていきます。
ちなみにこの作品の原作は、イギリスで最も成功しているSF作家の一人
- ピーター・F・ハミルトン『A Second Chance at Eden』
に収録されている同名作品です。
原作には続編もあるのですが『ラブ、デス&ロボット』の中では『ソニーの切り札』のみ映像化されています。
『ソニーの切り札』あらすじ
以下、『ソニーの切り札』の簡単なあらすじです。
ロンドンの地下で、人工的に生み出された生物を遠隔操作で操って戦わせる格闘試合が密かに行われていた。
ソニーは主催者のディッコから金と引き換えにわざと試合に負けるよう持ち掛けられる。しかし、彼女はそれを断った。
試合に臨んだ彼女は”カーニヴォー”と名付けられた生物を操り、相手チームの操る生物との激闘の末、勝利する。
試合後、ディッコの愛人ジェニファーに誘惑されるソニー。ところが、二人きりになったところを彼女に攻撃され、深い傷を負ってしまう。それはソニーが要求を呑まなかったことに不満を持つディッコが仕掛けた罠だった。
しかしソニーは勝ち誇った顔の二人にある事実を突きつける。
彼女の体は埋め込まれたプロセッサによって操られているだけに過ぎず、彼女の意識自体は、実はカーニヴォーの中にあったのだった。本来の姿を顕にしたソニーはジェニファーを殺し、ディッコを掴み上げたところでシーンは暗転する。
『ソニーの切り札』に隠された伏線描写とは?
この話の顛末は、実はソニーの本来の姿が人間ではなく
- 登場で死闘していた人工生物そのものだった
という点にありますよね。
その結末を知った上で物語を考察すると、その伏線がいくつか張り巡らされていることに気付かされるでしょう。
まず1つ目が、ソニーの真の姿であるカーニヴォーは
- ”彼”ではなく”彼女”である
という点が強調されていることです。
作品の冒頭で主催者のディッコが「彼はすばらしいぞ」と言葉を漏らすと、すかさずソニーは
ええ 彼女だけど
と返答します。
人工生物の性別に拘る理由、それは自分が「女」だからであり憎悪を抱く「男」では決してないからです。
男たちに復讐する、それが彼女のアイデンティティなんですね。
だから自分が「彼」と呼ばれるなんてことは許せない。
2つ目はソニーの服装です。
実は、試合前のソニーがフードをかぶっている点にもヒントが読み取れるのです。
なぜ、彼女はフードをかぶっているのか?
それは彼女の頭についている装置の光で、人工生物とのリンク状況が判別できてしまうからでしょう。
冒頭、カーニヴォーは水の中で動きます。
つまり、リンクしている状態なのですがフードをかぶっているためランプの色がわかりません。
試合が開始すると、スタッフが親和性リンクを起動します。
このとき最初のランプの色は緑です。
そして、起動後に赤に変わります。
これはリンクが開始したのではなく、実は「リンクが切れた」状態を指します。
つまり、人間体のソニーから意識が完全になくなる(=怪物のみとなって戦う)ことを意味するのです。
対戦相手のサイモンが常に体を動かしているのとは対象的に、ソニーは「カーニヴォー」と繋がっている際に完全な静止状態になっています。
これは対戦時に、彼女が「人間の姿」であるソニーから通信を遮断していることを強調しています。
本来の姿である「カーニヴォー」で今まさに決死の戦いを繰り広げているのです。
だからこそ「カーニヴォー」が危機に陥ったとき、横にいる(彼女の正体を知っている)スタッフはそれを操ってる人間のソニーではなく「カーニヴォー」に向かって叫んだともいえるでしょう。
3つ目はガラスの破片に対する彼女の反応です。
ソニーは常に裸足で、靴などを履いていません。
しかし試合直後に、ガラスが割れて足元に散らばるシーンがあります。
それを彼女は気にもせずに歩いているという点から、ソニーが痛みを感じない(=普通の人間ではない)ことが仄めかされているともいえますね。
『ソニーの切り札』原作との違いは?
ピーター・F・ハミルトン『A Second Chance at Eden』に収録されている原作『ソニーの切り札』では、ソニーの体は自動車事故で損傷しているという内容だそうです。
この点に関しては
「デイブ・ウィルソン(脚本・監督)のオリジナル脚本には、事故のことが書かれていました。上層部の要請で変更されたのか、単に時間が足りなかったのか、どちらかでしょう」
とあるので、時間の都合上ソニーの過去が深く語られることはなかったようです。
『ソニーの切り札』の制作会社について
この作品を制作しているのはアメリカの
- ブラー・スタジオ
で『ラブ、デス&ロボット』のプロデュースを行っている会社です。
ブラー・スタジオは、当作品の製作総指揮を行っているティム・ミラーの設立したアニメ会社になります。
他にも
- スーツ
- シェイプ・シフター
- ポップ隊
- 避難シェルター
- おぼれた巨人
は同じくブラー・スタジオが制作を行っています。
『ソニーの切り札』感想
ということで以上『ソニーの切り札』のトリビアをまとめてみました。
個人的にはありがちなオチだと感じてしまいまして(汗)
『ラブ、デス&ロボット』の作品の中ではあまり印象的な作品ではありませんが、好きな人には刺さる作品かもしれませんね。